もしもし。お久しぶりですね。私ですよ。

・・・・・今日電話させていただいた理由?ただ話がしたかっただけですよ。

またいつもの『HappyEnd』で終わるくだらない話ですよ。

聞くほどの余裕はあるでしょう?

 

 

その時『彼』は、10歳。

父親と母親と5歳年下の弟。四人家族だった。

どこにでもあるような『普通』の、それでいて『幸せ』な家族。

しかし、その家族に冬、クリスマス。

『普通』と『幸せ』を奪い取る事件が起こった。

「・・・・・もう息を引き取っておられます。」

脈を取って、警察は母親に話す。母親はただ泣き崩れた。その光景を見て。

 

その光景は一言で言い表そうものなら、唐突。

そこには、二人の人間が寄り添いあって、台所の壁にもたれかかって眠るように

息を引き取っていた。

一人は、背中から包丁を突き刺されていた。どうやら刺された後、動かされたらしい。血の跡が残っている。

もう一人は、特に目立った外傷は無い。だが、その小さき首には生々しい跡がくっきりと付いていた。

二人は『彼』の父親と弟だった。刺されて死んでいるのが父、首を絞められ死んでいるのが弟。

彼は、その光景を見て、瞬時に悟った。

死んでいるのだと。

もう二度と立ち上がることは無いのだと。

 

 

何ですか?何で弟の方は刺されて殺されていなかったって?

まあ、確かに自分が犯人なら二人ともナイフで殺しますがね。

それが、詳しく分かっていないみたいなのです。まあ、その仮説みたいなのは後ほど話します。

 

 

一日、二日と、日が過ぎていった。だが、事件が起こってから五日後。

母親は、警察に連行された。保険金目的の殺人で逮捕状が出たから。

 

 

これが仮説です。要するに、父親の方には、殺す意思が明確にあったけど、

弟の方は、ついうっかり、殺してしまったのではないかと。そう言う事です。

あくまで仮説ですから、気にしないで下さい。

 

 

もはや犯人は母親だと断定された。そして、『彼』は一人になった。

彼は母親の罪を信じなかった。たった一つの確信があったから。

「家族なのに殺すはずが無い。」

『彼』は真相を掴むため、日々家をたらいまわしにされる状況の中、必死に調べた。

 

数年が経った。もう『彼』は15歳になった。

そして、彼は真相を掴んだことによって、確信した。

 

母親の罪は確実だと。

 

小さい頃の確信も、深く調べていけば行くほど、脆く、弱くなっていった。

そして最後には崩れ去った。とある証拠で。

もはや、『彼』の心には希望は無く、絶望だけしか、残らなかった。

だからこそ、彼は。

 

死を選択した。

 

 

……以上です。へ?今回も『HappyEnd』ですよ。

『彼』は母親を最後まで信じたんです。きっと、母親にとっては、

嬉しい事だったとおもいますよ。

こう言う物なんですよ。私にとっての『HappyEnd』って言うのは。

誰かのために、誰かが犠牲になり、誰かがそれによって苦しみながら幸福な生活を歩む。

ん?じゃあ、あなたは誰も犠牲にならないのが『HappyEnd』と申すのであれば、

全ての物語が『BadEnd』……。ああ、なるほど。それがあなたの持論ですか。

確かに、全ての物語は結局悲劇を持って、締めくくられるのかも知れませんね……。

で、話は変わるのですが……何ですか?その嫌そうな……。ああ、やっぱりって顔してますね?今。

その通り?早く話せ?怖い怖い。話しますよ。

先ほどの話、覚えていますよね?おや、分かっているようなら話は早い。そうです。

彼に会って来てください。……いや、実は『彼』、車に惹かれましたが奇跡的に生き残ってしまったんです。

その代わり、母親がそれによって思いつめて死んでしまったんですがね……。

面会でその事を知ったその日、舌を噛み切ったんですよ。夜だったからでしょうかね。

もう、気付かれた頃には窒息死してたそうで。

さて、『彼』ですが……今『彼』は、多分、18歳だから、君と同じ年齢ですね。

きっと面白い事が起きると思いますよ?……私は無関係ですよ。

例の件?ああ、取りあえず彼にも手伝ってもらおうとは考えています。

では、それでは。

 

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