学校も終わって、暇な人間が帰っていく放課後。
学校からはちらほらと人が帰っていく姿も見える。もちろん俺もその中の一人だ。
そして、今俺が歩いている隣にはある一人の人物がいる。
それがまあ、数ヶ月前に付き合い始めたと言うか、何と言うか・・・・・まあ、彼女らしい。らしいって言うのも何だけど。
「えっと・・・・・。」
そんなことを考えてると隣から声が聞こえる。どうやら頑張って話そうとしてるようだ。
俺からもそうすれば良いわけだが、多分俺がここで喋れば彼女は逆に混乱する。
そんな訳で喋らず根気良く待っているのだ。「暖かい・・・ですよね?」
さて、何で疑問系なんだろうか。
「多分・・・・・暖かいんじゃない?」
疑問系で返してどうする、俺。ほら、彼女確実に困ってるよオイ。何かとてつもなく悪い事したみたいじゃないか。
仕方ないので、今度は上手く切り返せるように頭の中で練習でもすることにした。そして、数秒たったと思うと。「随分と仲がいいねえお二人さん。」
前から声が聞こえてきた。また変な質問をしてきたな・・・・・て、
何だ、何でこんなに彼女の声がゴツくなってるんだ。まるでよくありそうなチンピラのような声だぞ。
ってか待て。本当にこの声は彼女か?んなわけ無いだろ。じゃあ、誰だよ。そこでやっと俺たちが絡まれてるんだと言う事に気づいて、すぐに前を見る。
「って、誰も居ない・・・・・?」
「いや、後ろにいますよ?」
彼女が教えてくれた通り後ろを向くと、確かに人がいた。それでその人は俺等に背を向けている。
ついでに言うと、俺たちとは違う学校の学生らしい。違う制服を着てる。「何で声は前から聞こえてきたのに、いつの間に後ろにいるんだ?」
今思いついた疑問を言葉として出してみる。
「え?・・・・・声かけられたのに普通に無視して通り過ぎちゃったじゃないですか。
わざとかと思ってたんですけど・・・・・違うんですか?」「・・・・・ああ、さっきまで考え事してたから。」
何故だろうな、彼女がやっぱり、みたいな顔して笑ってるのは。俺、普段そんな事は無いだろ。
それとも自覚していないだけなのか?ってかもしかして今の状態もそうなんだろうか。「俺の話を聞けよ!!!」
・・・・・怒鳴られたか。やっぱり俺、普段からこう言うことしてるみたいだな。悲しいぜ、俺よ。
「で、御用は何ですか?」
仕方なく相手に向かって聞いてみる。と、それと同時に相手の顔を見て固まった。
が、このままでもいかんので言葉を発した。「「・・・・・お前かよ。」」
見事に言葉が被る。
「あの、誰ですか?」
「中学時代のクラスメイト。」
そう、さっき見事に同じ反応を見せてくれたのは、正真正銘、俺の中学時代のクラスメイトだ。
ん、そう言えば、さっき俺たちが喋ったと同時に今ゴツッって音しなかったか?何て言うか電柱に人が頭ぶつけた、みたいな。
まあ、隣の彼女は頭をぶつけた様子は無かったんだけど。「で、取りあえずお前は何の用だ。」
「別に言っても良いなら言うが、良いんだな?」
・・・・・ちょっと待て。これは何気なく究極の選択じゃないのか。
何か今コレ言わせたら色々と面倒なことになる気がするんだが、気のせいなのか?「・・・・・。」
何気なく隣を見る。隣では、彼女がポーっと見ていたが、俺が見ているのに気づくとハッとして、
「べ、別に大丈夫じゃないんですか?」
とか言われた。・・・・・さて、許可を頂いたわけなんだが正直信用してホイホイと聞くのも危ないと思う。
危なすぎる。でも、ここで嫌だって言うのも彼女に悪い気がする。
まあ、考えに考え、俺が結局出した結果はと言うと。「教えてくれ。」
こっちだった訳だ。すると、ヤツはすぐに喋った。
「簡単にいうと、お前らの親交を深めるために悪役になった訳なんだ。」
「・・・・・じゃあ言うか、とか言って、さらに整理してから話してくれると有難い訳だが。」
「もう遅い。」
「ああ、もういい分かったから。」
頭を手で抑えて、頭痛に苦しむようなポーズを作る。さっき言われた事を整理しているのだ。
・・・・・いや、無理だろ。どういう風に整理すればいいんだコレは。「悪い、理解出来なかったようだな。」
向こうから気を回してくれる。
「ああ、その通りだからもう一回頼む。」
「じゃあ行くぞ・・・・・・・。」
「「・・・・・・。」」
奴が無言になったので俺たちも無言になる。何だこの無駄に緊迫した雰囲気は。
「まず始めに言うと、お前らは恋人の関係な訳だ。なのに、まったく進展しないだろ?
それで見かねたとある奴に頼まれて、古いネタだが悪役が絡んできてどうのこうのって事をやって、
お前ら二人の仲を深めさせようとすることにした訳だ。分かったか?」「分かりづらいが要点は分かった。そいつに取りあえず余計なお世話だ、とだけ言っておけ。」
いや、実際に余計なお世話だ。進展してないとか言いやがって。微妙に進展してるんだぞ。
「お前さ、微妙に進展してるんだぞとか思ってないか?」
「何で分かる。」
「いや、そのくらいはな・・・・・でもさ、そんな事言ってる割にお前らギクシャクしすぎじゃね?俺でも分かるぞ。」
奴はそう言うと彼女と俺を交互に見る。
「お前ら、本当に付き合ってるのか?」
マジで殴っていいか?見れば普通に分かるだろうが。なんて俺には一生言えない言葉だ。
・・・・・理由?恥ずかしいからに決まっているじゃないか。「いや・・・・・一応・・・付き合ってるんじゃないか?」
真面目に言わず、それとなく言ってみる。
「あ、あの、一応ですか?」
・・・・・墓穴掘った。本人いたんだよ。
「じょ、冗談冗談。ちゃんと言うから。」
取りあえず誤魔化しておく。
「で、実際どうなんだよ?」
・・・・・五月蝿いな・・・・・コイツ。
「早く言えよ。」
・・・・・覚悟決めないとダメって奴ですか?コレは。
って事はだ。この後付き合ってるって言わなければいけない訳で俺としてはそれはとても納得いかない。
だが、ほのめかして言ってもまたそれはそれで隣が言ってくるし。じゃあもう逃げ道ないじゃないか。まあ、そんな訳で、始めに真面目な顔を作った。そして・・・・・。
「付き合っ」
「やっぱりストップ!」
真面目に言ったら言ったで隣から妨害来たよ。
で、その隣はとっさに出た言葉に自分で驚いてるのか、苦笑していた。「こんなときまでイチャるな。」
「イチャってない・・・・・ってかイチャるって何だオイ。」
「意味は伝わってるんだからいいじゃないか。」
まあ、そうなんだが自分としてはそう言う意味不明っぽい単語を聞くと突っ込みたくなるんだよチクショウ。
「さて、話戻すぞ?」
「・・・・・分かった。」
「さっきの様子見れば分かるけど、一応聞いとく。付き合ってる、でファイナルアンサー?」
「ふぁ・・・って何でこんな言わされ方なんだよ。」
正直懐かしいぞ。今でもやってるのか?その番組。
「ファイナルアンサー?」
「だから言わないっての。」
「ファイナルアンサー?」
・・・・・そうか、無限ループか。
「ファイナルアンサー?」
「ファイナル・・・・・アンサー。」
結局答える事にした。いや、だって終わらないし隣ももう待ちくたびれて早く終わって欲しそうな顔してるし。
ここでこう答えればすぐ終わる事じゃないか。と、言うわけで仕方なく答えた。で、終わったので、別れを告げようとしたその時。
目の前に何かが迫って来た・・・ってかもう当たってる。「・・・・・うぐぇ!?」
情けない声を出して、痛みからフラフラと後ろに下がると、辞書が目に入った。
アレで殴られたのか。しかもこの痛みは角か?角なのか!?「何なんだ一体。」
頭を抑えながら質問する。すると奴は笑って、
「気にするな。ただの私怨だ。」
とか何とか。
「・・・・・・・・・・いやいやいやいやいやいやいやいや!気にするだろ!?」
「どうでもいいですけど、『いやいや』って言い過ぎじゃないですか?」
「本当にどうでもいいって!」
こんな時に緊迫感の無い話をしてる俺達。本当に何なんだよ。
「だからイチャるな!」
いや、イチャついてる訳じゃないんだ。そこんところは分かってくれよ我が友人。
取りあえず突っ込まれたので向き直る。「で、私怨の原因は?」
「お前、もう一回殴られたいか?」
「すみません。」
何か知らないけど敬語になる。ってか殴られる理由が理不尽じゃないか?コレ。
俺が一体何をしたんだ。何故なんだ。「で、原因は分かったか?」
「全然。」
その瞬間もう一回殴られる。もう死にそう。いや、嘘だけど。
「お前、自分の彼女をちゃんと見てるのか?」
・・・・・今度説教され始めた。
「正直な話見れない。理由は・・・・・まあ、何て言うか。」
チラッと隣を見る。そうすると彼女もこっちを向いていて、丁度目が合った。
・・・・・すぐ逸らしたけど。「・・・・・お前たち、予想以上のバカップルだよ。」
「何でそうなるんだ。」
取りあえず突っ込みを入れる、が奴はその言葉を無視して、そのまま歩き出していった。
そして、途中電柱の隣で止まるといきなり電柱の後ろに辞書を振り下ろした。「うえっ!?」
悲鳴。その後女子が電柱の影から引っ張りだされる。
「これ、首謀者。それじゃ、後はご自由に。」
奴は出て来た女子を指さして、それだけ言うと歩いて行ってしまった。
そして、しばらくの間の気まずい雰囲気が流れた。「えっと・・・・・。」
そんな中、勇気を出したみたいでいきなり首謀者(らしい)の女子が喋る。
「邪魔してすみませんでした!もう邪魔しないので手を繋ぐなり何なりしちゃってください!さようなら!」
そう言ってすぐに逃げ出してしまった。台詞の内容がもの凄い気になったが一応無視しておく。
で、隣はと言うと、呆然としていた。まあ、いきなりあんな事言われればな・・・・・。
俺はしばらく待って、彼女がやっと正気に戻ったのを確認して、「……帰ろう。」
とだけ言った。
「そうですね。」
この放課後で、もう二日分の体力使った気がする。そんなことを思いながら帰っていった。
・・・・・言っとくが、途中で手なんか繋いでないからな。
グダグダして終わり。以上。